不動産の所有権登記名義人が死亡した(相続が開始した)場合,相続開始によって当該所有権を取得した者に対し,自己のために相続の開始があったことを知り,かつ,当該不動産の所有権取得の事実を知った日から3年以内に登記申請をすべき公法上の義務が課せられることになりました。
下記の類型のいずれか(重複する場合もあると思われます。)を検討する必要があり,新たに創設された「相続人申告登記」の利用を検討する必要もあるでしょう。
1 通常の相続の場合
相続開始から3年以内に下記の②がなされるとは限らず,下記の二つの局面の検討が必要になります。
① 遺産分割を経る前の遺産共有状態となる場合の暫定的な法定相続分による共同相続登記
② 遺産分割の結果を踏まえた終局的な相続登記
2 「特定財産承継遺言」に基づく相続を原因とする所有権移転登記
3 相続人に対する「遺贈」を原因とする所有権移転登記
義務違反の効果として,民法上の対抗要件を欠くという問題のほか(民法第899条の2第1項),登記申請義務を課された者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは,10万円以下の過料に処せられるという制裁を科されることとなりましたので,この改正の周知はもっとなされるべきではないかと思います。
※ 施行日(R6.4.1)より前に死亡した者の名義になっている不動産の場合
→当該相続により所有権を取得した者は,自己のために相続の開始があったことを知り,かつ,当該不動産 の所有権取得の事実を知った日又は施行日のいずれか遅い日から3年以内に登記申請をしなけばなりません。
ですので,何十年も前に不動産について相続が発生し所有権を取得したことを知りながら,遺産分割が成立しないその他の事情で,そのままとなっているケースでは,令和6年4月1日から3年以内に登記申請しなければならないこととなります。
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